月光の行水

 

 

仕事終わりの夜更け。

一線を画す一線が歪んで

昨日と今日との曖昧な境界線をなぞる。

 

深夜のコンビニは見るからに閑散としていて

バックヤードには店員が居るんだろうけれど

会計はセルフサービスで

店内には機械的な音声だけが鳴り響く。

 

残月は白々しく雲隠れしていたのに

勝色の夜空に浮かぶ月はやけに黄色くて目立つ。

月光の行水。

間接的な陽光でセロトニンは生成されるのだろうか。

そんなことを考えながら

みんなが死んじまった夜更けに

烏の寝床を探す。

 

静寂を切り裂くような背徳的なハミング。

信号機の赤色の明滅。

「生きているだけで幸せ」だなんて

そう思える余裕があるのなら

そりゃあ幸せなんだろうなぁ、だなんて。

懶惰な自尊心は綺麗だと謳われる月の

惨めなクレーターを探す。

 

 

朝日より早い覚醒、6時10分。

 

根の無いスイートピーがすぐ枯れた。

毎日水を変えていたのにと彼女は音を上げた。

格好の良い美しさは薄命で儚い。

永遠なら良いのにな、と

花火の根っこを探すのはナンセンスなのかな。

 

 

洗濯物を干して

寝起き一杯のコーヒーを嗜む。

 

 

今日も雲一つ無い青空だ。

淋しいほどに綺麗で真っ青だ。

いっそのこと泳ぐことが出来たのなら

この淋しさも無かったのかも知れない。

なくなってしまっていたのかもしれない。