離れて見紛う月と星

 

 

 

月も太陽も存在しないそんな朝。

 

何を頼りにこの時間は成り立っているのか。

街灯の人工的な明かりだけが無機質で堪らない。

いずれにしても明かりは必要だ。

 

徐々に顔を覗かせてくる朝日が眩しい。

朝焼けと夕焼けに張り付く感傷の違いはなんだろう。

何処に向かいたくて、何処に向かいたくないのか。

 

出勤前にはすでに蟻がせっせと食物を運んでいる。

一生懸命働いているのは分かるけれど

僕だって一生懸命生きている。

誰かのためという点では僕は僕を捨て切れないんだけれど。

 

 

気付けば蝉時雨にも懐かしさを感じて

思い出せないほどに遠ざかっていく。

最後に取り残された蝉は鳴き続けたのだろうか。

 

 

夜空には綺麗な三日月が浮かんでいる。

とても綺麗だ。

綺麗だけれど、果たして離れてしまったとしても

僕は月と星を見紛うことなく見つけることが出来るだろうか。

 

たらればは置いといて。

 

明かりのある生活はやはり安心だ。

何はともあれ。