物憂げな瞳の一瞥に似ている

 

 

 

夜勤明けの朝。

アラームに対抗する睡魔は僕にとっては一種のメシアで

特にすることもないだろうと託けて

責任転嫁して再入眠に至る午前9時。

 

 

可燃ゴミの日に現れる烏合の衆。

ゴミを漁る烏は僕らにとっては有害で

後片付けをしないという僕と似ている部分を差し引いても

どうにも醜く映る。

 

 

だけれど烏にとっては知ったことではない。

薄汚れさえも気にするような神経質な烏は

きっと食にもありつくことは出来ないし

生き延びることさえも叶わないだろう。

 

 

烏は百度洗えど白鷺には成れないし

潔白さを求め続けていたら

色の無い闇夜に消えうる他手段はないだろう。

だけれどその逃避行動はよく自分自身を見失う。

 

輪郭を求めて肌の触れあいを求め合う少女。

痛覚が救済と錯覚するほどの解離と自傷行動。

 

潔白では居られない。

強迫観念に左右された烏は再び飛べずに溺死した。

 

生きていれば罪悪なんて付き纏うもので

もうすでに潔白では居られない。

 

だからこそ泥沼であったとしても

背負いながら、責任を果たしながら

生きていく必要があるのだろう。

 

 

 

 

過去を啄んで愛好する倒錯や

生きるという罪悪に潔白さを希求する強迫観念。

神経症の烏が自身の醜さを内省し

薄汚れた体躯を何度も洗い流そうとする。

百度洗えど落ちない汚れから逃れるように

闇夜に潜っては輪郭を見失う。

その健気な様相はあの子の黒髪に似ている。

物憂げな瞳の一瞥に何処か似ている。